1998年の今日は、X JAPAN(世間的には「元」X JAPAN)のギタリスト hide の亡くなった日です。8年もの歳月が経ってしまいました。この間、私はずっとやるべきと思っていたことをできずにいました。今日はそれをするためにキーボードを叩きます。それは、故人 hide の名誉を少しでも回復することです。
まず、当時を覚えている方は、彼の死因が自殺であったという報道がされたことをご存じかと思います。これはもともと警察の発表によるもので、それをマスコミがそのまま流した形です。しかしこれは恐らく嘘です。少なくとも、自殺であるという証拠のないまま、いい加減な捜査による結論であることは間違いありません。
今さら、死んでしまった人のことをなぜ言う必要があるのか。必要ないと思う人はそれでも構いません。しかし、今でもこのような誤解をしてそれで苦しんでいる人はたくさんいます。ならばそんな人をひとりでも救えれば、hide もきっと少しは喜んでくれるに違いありません。
さて、検証していきましょう。
1. 現場の状況について
hide は泥酔している中、ドアノブに掛けたタオルに首がかかり、座った状態で窒息したと発表されています。この状況だけを持ってして警察は自殺だと断定しました。しかし、実の弟でありマネージャーでもあった松本裕士さんは「肩こり対策のための“牽引”中の事故だった」と主張しています。また、取り調べの中で警察に「あなたが自殺と認めないと、第一発見者に迷惑がかかる」と言われたことも、著書『兄弟』の中で公開しています。これは明らかに都合の良い証言を強要していますよね。
2. “自殺”の動機について
当時のテレビで、浅野八郎といういかにも専門家のような(その内実はただの素人で、別の番組では「占いに詳しい」などと紹介されていた)人物が、“深層心理”とやらを分析していました。新曲『ピンクスパイダー』に動機のヒントがあるという内容ですが、これは生前のこの曲についてのインタビューと照らし合わせるととてつもない解釈の差があることがわかりました。結局、その動機のヒントになるようなものすら誰も出せていません。
逆に、hide は新アルバムやツアーなどについて、死の直前まで饒舌に語っており、まさにアーティストとして脂ののった時期でした。むしろ、音楽活動をバリバリ続けたいという方のメッセージならたくさん発していました。
3. 人間性について
hide は別に何もかもが完璧な人間という訳ではありませんが、しかし大人の気配りのできる人間であったことは数多くのエピソードで明らかになっています。たとえばあるバンドのメンバーが麻薬で逮捕されたときには残されたバンドメンバーの怒りをおもんばかり、反省を促すメッセージを出しています。あるいは急性骨髄性白血病に罹った少女の闘病に親身になったことは有名です。自分が自殺をすることによる影響がどんなものなのかを考えられないような人物ではありません。仮に、鬱病(認知障害による自殺念慮が症状として表れる)に罹っていたなら話は別なのですが。では、次はその点を見ていきましょう。
4. 鬱について
以前にも書きましたが、自殺と鬱病には極めて強い関連性があります。hide の活動水準は極めて高いレベルで保たれており、どうひっくり返しても鬱病に罹っていたとは考えられません。多少なりと心理学を学んできた私には、これが自殺を否定する決定的根拠に思えます。
5. もし万一自殺だとしたら……
それでも万一自殺の可能性はないのかと言われれば、それは残念ながら完全には否定できません。たとえば、酔いにより気持ちが通常の状態とは異なってしまっていて、突発的に自殺を試みたり、あるいは悪ふざけ的にやってみたということは全くあり得ないとは言えないかも知れません。ただ、だとすれば1.で説明したような方法を採るだろうかという大きな疑問が残ります。
6. 後日のマスコミの対応
この事件以来、自殺、特に有名人の自殺の報道が減っていることにお気づきでしょうか? これは遅まきながら、この事件を機に「はっきりと自殺とは言えない件は、自殺とは明言しない」というごく当たり前のことが行われるようになったからです。たとえば、Raphael のリーダー、華月さんは2000年に鎮静剤の大量摂取により亡くなっています。この時マスコミは死亡したこと、そして死因に事件性がないことだけを伝えました。もちろん自殺であろうと思われるケースでは自殺と発表しています(例:ポール牧さん)ので、別に単に「臭いものに蓋をする」対応をしている訳ではありません。
この逸話は逆説的に、警察が自殺と発表したことに対し、そしてマスコミがそれをそのまま垂れ流して報道したことに対し、失敗であったことを認めている証拠です。
以上は、hide の死が自殺である可能性が極めて低いと考えられる主な6つの論拠です。本当はまだまだあるのですが、恐らくこれだけ挙げれば、少なくとも警察の発表とマスコミの報道を鵜呑みにできないことについては納得いただけるものと信じています。そして、当時のファンとして深く傷ついた人がひとりでも、少しでも救われることを願っています。