予兆は、3日前にすでにありました。弟夫婦の欠席が急遽決まってしまい、2人分の席が空席となってしまいます。この食事会の幹事役を務めるうちの父親、この事態に対しこんな決断を下します。
「まあ2人分の食事くらい、ほかの誰かが食べるだろう。予約はそのままにしとこう。」
ちなみに会場はお寺の近くの日本料理店です。某ホテルの最上階にある、比較的名の知れたお店です。そんなところでこのような狼藉を働こうというのですから、思わず苦笑まじりに
「余るくらい食事を出すなんて、中国流だね。」
とちょっとした皮肉を言ってやりました。食い意地の張ったうちの一家ならいざ知らず、親族の集まる席でそりゃないでしょ。それに、お店の格を考えたらちょっと考えられない決断ですよね。
さてさて、当日です。仕事が長引いて開始約1時間後に到着してみたら、ある意味で宴もたけなわでした。うちの母方の親戚は飲む人が少なくて(というか飲む人は比較的早死にしてしまい)、大騒ぎ、馬鹿騒ぎにはなりません。和やかな歓談風景です。われわれはそれで特に不満もなく楽しみます。
が、もしその光景をよくよく観察してみたら、少し異常なものに映ることでしょう。久々に会う親戚には「元気にしてた?」「今、何年生?」「早く結婚しないと」なんて話題が定番なのでしょうが、なぜかそんな会話はあまりありません。むしろ
「みよしの(広島の老舗の団子屋さんです)ってどこに移転したの?」
とか、
「大阪に旅行に行ったときに体調が悪くなって、有名なお好み焼き屋さんに行ったのに“ミニお好み焼き”しか食べられなかったのが悔しい!」
とか、そんな話ばっかりです。
ちなみに引き出物にはムッシムパネンの焼き菓子です。こちらを渡すときも親戚一同、
「あ、知ってる知ってる。よく自転車で買いに行く。」
「前、廿日市にあったでしょ。」
とまあ、そんな感じ。みなさん、情報通ですね……。
会話だけではありません。テーブルの少し向こう側に目を向けると、中学生になる従甥(いとこの息子さん)がご飯のお茶碗を追加で2人前押しつけられながらも、それをものともせずにぱくついています。「まだまだイケル」と頼もしいセリフつきで。
その姉、つまり従姪(いとこの娘さん)の席の前にはなぜか漬け物が5人前。しかもそれに大喜びしています。「へへっ、すまねぇな。」と(ある意味)今時の若い娘らしいセリフつきで。
仲間内や職場ではよく食べる方で通っている私ですが、母親に言わせれば「少食」にされてしまいます。私も職場でいただいた差し入れ(大判焼き)を1個食べた後に来ていて、ここでもお刺身を1人前余計に食べてるんですが……。
これまで、こんなに「食」に偏っているのはうちの家だけだと思っていました。まさか親戚一同こんなんだとは気づかなかったよ……。このままでは飽食の大罪により、一族郎党地獄行きは免れないので、せめて毎日の食事に感謝しながら今後も生きていくことにします。ごちそうさま。