さて、プロ野球セントラルリーグの決着がつきました。一応カープファンの端くれっポイ私としては、もしかしたら残念かもしれない結果に終わったような気もしないでもないです。広島東洋カープは、クライマックスシリーズ出場まであとわずかのところで敗れ去り、今季4位が確定しました。
この9月、こちら広島はけっこう熱かったんですよ。市民球場ラストイヤーに重なったこともあるのですが、いつになく球場に足を運ぶ人が多かったですね。にわかファンを自称する人すらいました。地元だけではありません。遠方のカープファンが、その距離を感じさせないほどの熱のこもった応援している様子も随所で見て取れました。
ですが実は私、それを少し醒めた目で見ていました。ひとつは私があまり熱心なファンでないからです。が、それ以上に大きかったのが、チームのそれまでの戦いを見ていて、あまり期待できないなと思っていたんです。よほどの幸運に恵まれないと、クライマックスシリーズ出場は難しいだろうと考えていました。
ここまで読まれた方の中には、上の文章に矛盾を感じられた方もいらっしゃるでしょう。その通り。少し変ですよね。大してファンじゃない、つまりあまりきちんと試合を見ていないのに「チームのここまでの戦いを見ていて、あまり期待できないなと思っていた」ってのは、何だかおかしな話です。
でも一応、私なりにちょっとした根拠(らしき物)があるのです。今回はその根拠、X W-L ratio(expected win-loss ratio、さしずめ「期待勝率」といったところでしょうか)について紹介したいと思います。
要は、得失点から予想される勝率です。計算式は次の通り。
得点の1.82乗/(得点の1.82乗+失点の1.82乗)
野球は点をたくさん取った方が勝つスポーツなので、非常に大ざっぱに見ると得点が多く、失点が少ないチームが強いはずです。そこで、そのチームの得点と失点を元にチームの実力を推測できると仮定します。(ずいぶん乱暴な仮定ですけどね。ただ、この数字を開発した人は、まったく無根拠にこの計算式を作ったわけではないようです。)このような観点で、得点と失点から「実力通りならどのくらいの勝率になるのか」を計算しようというわけです。
自分から言い出しておいてなんですが、実は冷静に見れば、こんな数字は大してあてになりません。これによってはっきりわかることと言えば、そのシーズンで競り合いに勝てていたかどうかくらいです。(期待勝率より実際の勝率が高い場合、競り合いでよく勝ったということになる。)ただ、もし仮にこの数字の威力を少し強めに信じたとしたら、ある程度は今後の予測にも使えるというわけです。
では、実際に計算してみましょう。9月28日(日)、広島市民球場での最後の試合に勝利したことにより、広島は67勝66敗の貯金1、3位につけていました。広島市民のボルテージは最高潮でした。この時の勝率は.504です。この段階での期待勝率を計算してみたところ、.464でした。実際の勝率が期待勝率より、なんと4分も高かったのです。
そしてこの傾向、カープのクライマックスシリーズ出場が「あり得る」という風に見られ始めたころからずっとそうでした。勝率はそれなりに高い割に、期待勝率がやや低かったのです。だから思っていました。今の好調は実力以上(以外)のものが出た結果かもしれないと。ということは、今後どちらかというと、加速するより失速する可能性の方が高いのではないかと。
では、3位以下の順位が確定した10月4日(土)の結果に基づき、セントラルリーグの勝率と期待勝率を見てみましょう。
順位 チーム 勝 敗 得点 失点 勝率 期待勝率
1 阪神 80 55 557 502 .593 .547
2 巨人 80 56 615 520 .588 .576
3 中日 71 65 533 532 .522 .501
4 広島 68 69 529 590 .496 .451
5 ヤクルト 62 71 549 549 .466 .500
6 横浜 44 91 527 679 .326 .387
どうでしょうか。けっこうおもしろいでしょ? 今季の結果についてがっかりしたファンも多かったかもしれません。しかし、このような見方をすることで、落胆するよりもむしろ健闘をたたえるべきだという気になってきませんか?