あまり関心がなかった北京オリンピックの予選ですが、まあどうのこうの言って試合をやっていたら観たくなってしまうものです。正直、国別対抗ってどうしても嫌な空気が漂うので好きじゃないんですが、それでも野球は野球です。ナカナカこれがビミョーなところでして、ドリームチームが結成されるのは嫌いじゃないんですよね。(だから、他で言うとオールスターとかも嫌いじゃないです。)
オリンピックの予選という言い方がされていますが、実際にはアジア野球選手権2007という国際大会に北京五輪の予選の役割も持たせているそうですね。この選手権には一次予選もあり、タイ、パキスタン、香港、それにフィリピンが参加しています。この予選を勝ち上がったフィリピンと、アジアの3強でありシード国の日本、韓国、台湾がリーグ戦を行います。優勝国のみが北京五輪出場を決めることになります。(ただし優勝できなくても2位・3位チームは世界最終予選に出場でき、8国中3国が五輪出場となります。)
すでに多くの方が報道を通じてご存じかと思いますが、日本はこの選手権で見事3戦全勝により優勝し、北京五輪への切符を手に入れました。まずはおめでとうございます。
正直言って、戦力的には行けて当然だと思います。しかし、野球は元々が番狂わせの多いスポーツですし、また短期決戦でしかも国際大会となるとさらに不測の事態が起きやすいものです。したがって、実力を実力通り発揮するのは案外難しいものです。星野ジャパンの素晴らしかった点は、何と言ってもそのような不測の事態ができるだけ起きないようにさまざまな配慮をしつつ、それでも何かが起きたときには動じない心構えを徹底していた点にあると思います。
その根底には、星野仙一監督が闘将と呼ばれるゆえんである、勝利への揺るぎない信念と、それを表に出す表現力があるのでしょうが、その辺は誰にでも言えることですから言いません。それよりもむしろ、その信念を理論的、合理的な形に変えて、チーム作りをしたことが大きかったと思います。ホットなハートをクールなマインドで形にしていました。
ただ、その点において唯一の例外が発生した韓国戦には不満が残ります。いちばん勝ちに近づく、いちばん確率の高い戦い方をしなければいけないにもかかわらず、韓国のペースでの試合を許してしまいました。韓国は勝てる可能性を高める努力を最大限行い、そして日本はなぜかそれにお付き合いしていたのです。その韓国の“努力”の内容は紳士協定を破った土壇場でのメンバーチェンジや、死球狙いで打者が自ら投球に当たりに行くなど、とてもほめられるようなものではないものも含まれますが、それ以外の野球としての戦い方は巧かったです。WBC での戦い方にかなり近く、要は力の差を感じさせない接戦持ち込み作戦です。
それに対して日本の攻撃は「つなぎの野球」と称して、おなじみのスモールボールです。こちらも WBC で2度も敗れたときと同じような野球をしてしまっています。つなぎを意識するのは別に悪くはないのですが、つなぐんだったらバントよりもヒットでつなぐのが効率的です。バントを多用するから取れる得点が少なく、取れる得点が少ないから投手に頼った僅差のゲームになるんです……って、これは何度か触れていますから、当ブログの読者様にはおなじみですね。
ともあれ、相手をナメるのはいけませんが、相手を呑んでかかるべきでした。ちょうど、フィリピンや台湾との戦いのようにね。要は2年近く前に WBC アジアラウンド開始時にイチローが言った「向こう30年は日本に手を出せないなと思わせるような戦いをしたい」が正解です。たぶんきっと。
それでも勝てたのは、運とか精神論とかいろいろありますが、いちばんの原因は実力、特に投手力だと思いますけどね。クローザーに上原浩治というのは、いざ出てみると思った以上に迫力があります。
北京での本戦は開催国の中国に加え、アメリカ大陸代表のアメリカ合衆国、キューバ、ヨーロッパ代表のオランダがすでに決まっており、そこにアジア代表の日本が加わりました。残り3枠をカナダ、メキシコ、イギリス、スペイン、韓国、台湾、オーストラリア、そしてアフリカの代表(未定)で争うことになります。やはりどうのこうの言って MLB の選手が出ないので今イチ私的盛り上がりに欠けるのですが、それなりに楽しめれば楽しみたいところです。