さあ! 今季のレギュラーシーズン最後のシリーズとなりました。最後の3連戦は、同地区のテキサス・レインジャーズが相手です。優勝争いをしていた時期に思わぬ煮え湯を飲まされた相手ですから、きっちりと復讐してほしいものです。対戦成績もここまで8勝8敗のタイですし、勝ち越して来年につなげたいところでしたが、結果はどうなったでしょうか? それでは見ていきましょう。
【第1戦】○ SEA 6−4 TEX
抜きつ抜かれつのおもしろい試合でした。先発はジェフ・ウィーバー(背中にファスナーつき)で、相変わらず素晴らしい球を投げていましたが、この日は珍しく少し打ち込まれました。まずは3回表、マイケル・ヤングに2ランシングルを浴びます。ヤングはさすがですね。4月には打率1割台と絶不調でしたが、すぐに取り戻し先日5年連続200本安打を達成しました。これにはイチローも「敵だけど」と前置きしつつライバルの活躍に喜んでいました。本当に良いライバル関係です。
対するこちらの打線、しばらくはなかなか打てませんでしたが、それでも負けていません。6回裏に満塁のチャンスを作ると、6番城島が2ランダブルを放って同点とします。最近は城島、守備ばかりが目立ち、攻撃面では打っても勝ちにつながらなかったり、チャンスに打てなかったりでしたから、久々の目立つ活躍となりました。さらにここ最近打撃でアピールし、この日7番に入ったマイク・モースが続いて、もう1点を奪います。これで逆転し3−2。
しかし相手も食い下がります。7回表、シアトル戦になぜかよく打つ9番トラヴィス・メトカーフがウィーバー(背中にファスナーつき)から2ランホームランを放って3−4と再逆転です。なかなか将来性を感じさせてくれる打者ですね。お見事でした。結局これでウィーバー(背中にファスナーつき)は4失点です。ただし、8回までしっかりと投げきったのはさすがです。1年契約なのが惜しいですね。ウィーバー(本物)だけ切ってウィーバー(背中にファスナーつき)だけと再契約するなんて美味しい話はないんでしょうか。
試合に話を戻しますと、こちらもまだまだ負けていません。8回裏に今度は代打ヴィドロの1ランシングルが飛び出し同点に追いつきます。これで4−4。目が離せません。ここでイチローにまわってきたのですが、この場面ではセカンドゴロに打ち取られ、この回を終えます。イチローはこの試合、2度の好機に倒れています。今季の打点が68で自己タイですし、もう1本が見たかったのですが。
9回表はまたしても同点なのに J. J. プッツの登板です。夏頃までは0勝だった J. J.、このパターンですでに5勝を稼いでいます。この日はランナーを2塁に置くピンチを招くものの、それをものともせず仁王立ちし無失点に抑えました。
9回裏は2番ベルトレイからです。ここで見事にシングルを放ち、期待できる打順につなげます。が、3番イバニェスはレフトフライ、4番ギーエンはサードゴロと、続けません。2アウト2塁となり、打順は5番――とはいえ新人の――ジェフ・クレメントが左打席に立ちます。このセプテンバー・コールアップで初昇格し、マイナーを含めても2年目の若者にはかなりタフな状況のはずですが、ドラフト1巡目ルーキーの強心臓は違いますね。4球目を打ち返すと、広いセーフコフィールドのいちばん深いところ、日本の球場でたとえるとバックスクリーンがある辺りに大きな放物線を描きます。ウォークオフ(サヨナラ)ホームランです。あっと驚く幕切れとなりました。6−4でゲームセットです。2日前の同点ホームランと言い、良いところで仕事をしますねぇ。楽しい試合でした。
イチローは5の2です。.350となりました。なんかオルドニェスはフル出場して打ちまくったようで、.360です。スゲーな。こうなるとさすがに追いつけませんね。
【第2戦】○ SEA 5−1 TEX
先発の両ベテランがよく投げ合った好ゲームでした。こちらはバティスタ先生が登板し、今季一二を争うような素晴らしい快投を見せてくれました。先生は今季後半に大活躍してくれましたが、それでもだいたいは四球などでピンチを作りながらそれに耐えて粘投するパターンが多かったんですよね。でもこの試合はそうではなく、ほとんど隙がありませんでした。
ピンチらしいピンチは2回表ぐらいでしょうか。ソーサがシングルで出塁した後、暴投で2塁に進めてしまうと、直後にクルーズに1ランダブルを許し1点を先制されます。例によってこの調子で厳しい戦いを強いられるかと思いきや、危ないのはホントにここだけでした。後続を切って取ったかと思うと、あとはあれよあれよとイニング・イーティング(回を食いつぶしていく)していきます。結局この1失点のみで、3安打2死球5三振で8回までを投げきってしまいます。大先生モードでした。
一方のミルウッドも、さすがにベテランらしい投球で試合を壊しません。実際にはシアトル打線は彼から7回で11安打も打っているのですが、見ていた感じだとそんなに打てたという印象がないんですよね。かなり要所要所を締められた感があります。バティスタ先生に大先生モードのスイッチが入っていなかったら負けていたかもしれません。
追いついたのは2回裏です。ノーアウト1・3塁から城島がサードゴロダブルプレイで1点を奪います。(このケースで打点が記録されなかったんですが、ルールってそれで合ってましたっけ? だとすれば私、長いことルールを誤解していました。)これで1−1。点は取りましたが、追加点の芽は摘まれてしまいました。
3回裏も見事です。2アウトからイチロー、ベルトレイに出塁を許し、イバニェスが1ランシングルを放って1点を奪います。さらにギーエンも内野安打で続きますが、そこからクレメントを打ち取り、ここも最少得点。こんな具合で、打たれても大量失点を許しません。実に巧いです。
が、6回裏に力尽きました。1アウト満塁で打席には7番マイク・モース。見事にチャンスをものにしました。ライト前に2ランシングルを放ってほぼ試合を決しました。その後7回裏にもイバニェスのソロホームランで突き放し、9回表をショーン・グリーンが3人で締めてゲームセットです。ナイスゲームでした。
イチローは4の2でした。打率は.351です。珍しくマトモに盗塁死を記録しています。(誤審やヒットエンドラン失敗による盗塁死がほとんどなのですよ。)相手捕手のライアードの機敏な送球が功を奏した形となりました。
【第3戦】○ SEA 4−2 TEX
今季最終戦は現地時間では日曜日のデーゲームです。ぜひとも良い試合を見せるという形でサーヴィスしておきたい地元ファンの前で、エースのフィリックス・ヘルナンデスがびしっと決めてくれました。
ただし、最初は例によって心配な立ち上がりでした。1回表、2番のキンスラーに死球を与えてしまい、さらに直後3番マーフィーにダブルを放たれ1点を失います。それでも、このシーン以降はほとんど危なげなく投げていましたね。相変わらず冴えわたる98マイルの直球と、切れの良い変化球とのコンビネーションは、決まっているときには手がつけられません。この日の自責点はこの1回の1点だけでした。
しかしあちらの先発、新人のマーレイもなかなかやります。チーム打率ではアメリカンリーグ2位のシアトル打線に、結局6回を投げて5安打しか許していませんから。こちらはこちらで、点を取るのに苦労しました。しかしそれでも、こちらが一枚上手です。
まずは2回裏。同点打は意外な人の一発でした。ベテラン捕手ジェイミー・バークは以前も紹介したように大変な苦労人ですが、今季花開き、ご存じのように城島のバックアップを十分すぎるほどに勤め上げました。しかし彼は、キャリアでまだ一度もホームランを打ったことがなかったのです。その MLB 初のホームランがこの最終戦で飛び出しました。真ん中やや外よりの球だったでしょうか。良いところで同点に追いつきました。
さらにブルームクィストを2塁に置いて、イチローがファースト内野安打を放ちます。イチローの足にあわてたファーストのサルタラマキア、悪送球でブルームクィストを生還させてしまいました。記録上はもちろん打点ではありませんが、イチローが奪った点と言って過言ではないでしょう。これで2−1となり、勝ち越しです。
バークはさらに活躍します。1アウト後、アダム・ジョーンズがライトの深いところ、あと少しでスタンドに入りそうな強烈な打球のトリプルを放つと、カウント1-1から見事なスーサイド・スクイーズを決めます。3−1と突き放しました。この投手戦、これでほぼ勝負が決しました。
5回表にはロペスのエラーをきっかけに1点を失いますが、ヘルナンデスはあわてることも臆することもなく簡単に後続を打ち取り、安定感を見せます。すると6回裏にはロペスが先ほどのミスを取り戻す、だめ押しのソロホームランを放ちました。4−2です。
こうなるともうヘルナンデスの独壇場です。この2点差を守りきったまま、8三振を奪い完投目前の9回表までやって来ました。ここで監督、いったんは選手を守備につかせますが、その直後にイチローとギーエンをベンチに下げています。要は、観客に向けて挨拶をさせる時間を取るというファンサーヴィスなんですが、粋な計らいですね。
さて、そんなこんなで、ヘルナンデスは9回表2アウトランナーなしまで難なくこぎ着けます。まあ普通なら完投するところですが、ここは監督からもうひとつの粋な計らいです。やはり最後はチームを支えてくれた大クローザーに締めてもらいましょう。J. J. プッツの登場です。そして、この降板でヘルナンデスにも挨拶の機会が与えられました。もちろん、会場はスタンディング・オベーションで迎え入れました。
そのプッツですが、いつも通りに決めてくれました。打席には6番のサルタラマキア。カウント2−2から、高めの直球を釣り球として投げます。いわゆるくそボールなんですが、球威があると「ボールだとわかっていてもつい手が出てしまう」というヤツです。ねらい通り見事な空振り三振を奪い、この試合を、そして今季を素晴らしい形で締めくくりました。
イチローは3の1で、最終的に.351でシーズンを終えました。今季は3年に1度の当たり年でしたから首位打者を取ってほしかったのですが、結果として2位に終わりました。最終的な安打数は238で、こちらの方はもちろんトップです。
最後は華々しく地元でスイープを決めてくれました。気持ちよかったですね。シーズンを通してみても、全般的には良かったんじゃないでしょうか。久々に最下位を脱出できたのみならず、9月までポストシーズン争いをしていましたし。(88勝ならワイルドカードで出場できていてもそんなにおかしな数字でもないですしね。)
今年はとても楽しかったです。でも全試合紹介なんてアホなこと、二度とやらねーぞ。マジ疲れたー。
気が向けば今季の総括と来年の展望とか、あるいはポストシーズンのこととかも書いていきますね。あくまで気が向けば、だけど。