だからといって、ずるずると連敗を続けるわけにもいきません。特に、打線に奮起を期待したいところです。果たしてマリナーたちはその期待に応えられたのでしょうか。それでは見ていきましょう。
【第1戦】× SEA 2−6 OAK
ここ最近は妙に勝負弱いです。どうしても、「ここぞ」というときにやられてしまいます。打線も、投手も。先発のウィーバー(背中にファスナーつき)はこの日も好投し、8回途中3失点でマウンドを降りています。しかし相手エースのヘイレンがよく抑え、2点しか取れませんでした。
1点差で迎えた9回表、この回を抑えれば希望も多少残っていました。しかし1アウトを取って仕事をしたオフラハティが降板してから、雲行きが怪しくなってきました。まずは替わったリーツマが2者連続四球を出して、そのまま交代します。その後を継いだ左腕ジョージ・シェリルは、左のトラヴィス・バックを三振に取って仕事をします。が、ここで右のスウィッシャーに対してベンチはそのまま続投を指示、そして希望を大きく打ち砕く3ランホームランを打たれてしまいます。6−2。希望は完全に打ち砕かれました。
シェリルはここまでホームランを1本しか打たれていなかった投手ですから、先日のプッツ同様、やはり責められませんが……なぜここで交代でないのだろうという疑問は残ります。他の面では知りませんが、少なくとも継投の面ではチャベス投手コーチの采配は不可解としか言いようがありません。何のためにマーク・ロウを昇格させたんだか。そして、故障明けで一度もぴしゃりと抑えていないリーツマをセットアップとして起用することも、早く考え直すべきだと思います。……って、あれ? これ前も書いたか。まあいいや。
イチローは5の1です。
【第2戦】○ SEA 7−1 OAK
ようやく連敗が止まりました。しかもすごく良い形で勝てたので、気分も変わってくるかもしれません。先発のヘルナンデスが7回を投げて、7三振1失点と「結果的に」好投しています。「結果的に」ってのは、内容はあまり誉められたものではないという意味なんですが。というのも、7回のうち三者凡退だったのは2度だけで、しかも先頭打者に出塁を許している回が3度もあるんですよね。先発投手としてある程度長いイニングを投げなければいけないので、手を抜けるところで手を抜く必要があるのもわかるのですが、抜きどころが間違っているように思えます。なぜか、先頭打者や2ストライク後に力を抜くことが多いように見えるんですよね。逆でしょうが。普通。
それと、最近は先発陣がよく踏ん張っていて、リリーフ陣は休養できていると思うのですが、6回終了の時点で100球以上を投げていたヘルナンデスをなぜか7回120球まで引っ張りました。しかも彼はエースとはいえ、球界の至宝となりうる若手なので、年間イニング数を200までに限定しているハズなんですが……。
とはいっても結果は出しています。初回にニック・スイッシャーからソロホームランを浴びたほかは、ロペスやベルトレイ、イチローらの攻守にも助けられ、得点を許していないのですから。また、その後を引き継いだモローは2回を4三振を含む無安打無失点で切って取り、復活を印象づけました。大差がついたので、マーク・ロウのテストを兼ねた調整登板でもあるかなと思いましたが、そんな様子はみじんも見られませんでしたね。復活登板を楽しみにしているんですが。
打つ方は、良い形で打線がつながって、ムードを盛り上げるような点の取り方になったと思います。2回までは相手先発の左腕ブレイデンに合っていなくて、ヤバいなと思ってみていたのですが、打線がひと周りした3回からシアトル打線が牙をむきました。1点をリードされた3回裏2アウトから、イチローが四球を選び、ヴィドロがライト前シングルで続きます。さらにギーエンのサードゴロエラーという幸運に見舞われ、満塁となります。このチャンスに、ここ最近好調で、また相手先発が左腕であるということで4番に起用されたベルトレイが期待に応えます。カウント3ボール2ストライクから三塁線を破る3ランダブルで一気に逆転です。いろいろな意味で大きな一撃でした。連敗中のチームに勇気を与える逆転打であること、相手のミスにつけ込んで経験のない若い投手の動揺を誘って点を奪ったこと、新監督の采配(4番起用)が当たったこと、そして4番の一打だったことなど。
4回裏にもさらに追い打ちをかけます。城島のヒットとロペスのバントなどで2アウト2塁として打席にはイチロー。ここでもイチローらしいクラッチな、そして技ありのセンター前シングルで1点。さらにヴィドロもライト前シングルでイチローを還します。とどめは3番ギーエンです。内角低めに甘く入った球を(珍しく)美しいスイングで捉え、レフトスタンド上段に飛び込む大ホームランを放ち2点を奪いました。計4点を奪い、7−1として序盤で試合を決しました。
イチローは3の2です。初回のショートゴロも攻守に阻まれ(というか、一塁塁審の誤審に阻まれって感じだったけど)ヒットにはなりませんでしたが、打球はあと少しで抜けそうだったし、走塁はあと少しで内野安打になりそうな惜しい当たりでした。右に左に自由自在に打ち分けています。
【第3戦】○ SEA 4−3 OAK
薄氷の勝利でした。2回表にラミレスが3点を先制されたときは嫌なムードだったんですが、その裏すぐにブルサードの犠牲フライと城島の2ランホームランで同点に追いつきます。城島、相変わらずの絶不調にもかかわらず、良い仕事をしてくれました。シアトルでもすっかり「ケンジィ」として定着しているようです。
さらに4回裏にはベタンコートの久々の一発が飛び出し、4−3とします。ただ、相手先発ゴダーンは4失点は喫したものの、基本的には良い投球をされてしまった感があります。なんせ、4安打1四球完投でしたから。勝てたから良いのですが、欲を言えば相手ブルペンから1人でも引っ張り出して、明日の試合に少しでも差し支えるよう疲弊させておきたかったところです。
結局ラミレスは6回まで投げきり、またしてもセーフコ不敗神話を継続することとなりました。でも、7回表からが大変です。4−3というわずか1点差リードの中、出てくるピッチャーがことごとく中途半端な抑え方をしてくれるので、ものすごく頻繁に投手交代する羽目になりました。もっとも、みんな最近投げていなかったので、わざと調整登板させようという意図もあったのかもしれませんが。
まずは7回頭からはクリス・リーツマ。2アウトを取ったもののランナー2塁のピンチを作り、ショーン・グリーンに交代。(右腕から右腕という少し珍しい継投。)グリーンは後続をピシャリと抑え7回を終わらせると、8回表も続投。しかし先頭打者を塁に出してしまってジョージ・シェリルに交代。シェリルはワンポイントでの起用に応えてダン・ジョンソンから1死を取り、今季初登板のマーク・ロウに交代。ロウも1死を奪ったものの、次の打者を四球で出して2アウト1・2塁。ここで J. J. プッツの登場となります。プッツはきのうまで4番を打っていた代打ジャック・カストを100マイルの速球4球で簡単に三振に切って取り、難を逃れます。
9回も当たっているスイッシャーに四球を出しはしたものの、それ以外の全員から三振を奪い、ほとんどつけいる隙を与えずゲームを終わらせてしまいました。いつものプッツが戻ってきました。(打たれた前回を含め、ここ3度の登板ではプッツの投球内容は少し危うかったのです。が、この日はほぼ完璧でした。)
イチローは4の0です。
【第4戦】○ SEA 14−10 OAK
素晴らしい先発投手陣とそこそこのブルペンを擁し、打線の方はマネーボールでじわじわと攻め立てる OAK、先発は今イチながら卓越した守備力とピカイチのリリーフ陣を持ち、つなぎの打線を持つ SEA、この両者がこんな壊れ試合をやるなんて想像もしていませんでした。
序盤は SEA ペースです。2回までに4番ベルトレイのホームランなどでいきなり6点を奪いました。楽勝ムードかと思われたのですが、こちらの先発ウォシュバーンもピリッとしません。5回までに5点を奪われます。どうも大ざっぱに3試合くらいごとに調子が切り替わっている感じですね。となると次回辺りからまた期待できるはずです。……ってこんな験担ぎもどうかと思いますが、ここ最近のジャロッド兄さんのやられっぷりを見ていると、そうとでも考えなければやってられません。
5回裏を終わって7−5。ここからの継投が見物です。6回表に登板したのはクリス・リーツマでしたが、やはり今回も期待に応えられませんでした。さらに4点を奪われ逆に9−7とリードを許してしまいます。もしかしたら、この登板は今後に向けてのテスト起用だったかもしれません。だとすると、クビが涼しくなっちゃう可能性がありますね。この日は現地時間で29日。トレード・デッドラインまであと2日です。さらにオフラハティも1点を奪われます。まあ点を取られてもいつも大崩れしない点はオフラハティの立派なところで、若手離れしていますけどね。これで10−7の3点差。残すイニングは7・8・9のわずか3つです。
が。久々に美しく打線がつながりました。7回裏、イチローがバントヒットで出塁します。ピッチャーの頭を越える絶妙な当たりでした。私はミスがラッキーになったのかと思ったのですが、解説陣は「狙ってる。良いアイディアだ。」と言っていますね。その後、捕手の送球すら許さない完璧な盗塁を2つ重ねて3塁に進むと、4番ベルトレイのシングルで生還しています。さらにその直後、セクソンの退場により途中出場していた5番ベン・ブルサードがレフトスタンドに豪快な2ランホームランをたたき込み、ついに10−10の同点に追いつきます。
こうなると俄然 SEA ペースです。8回表、ショーン・グリーンがセットアップとして登場し難なく抑えると、その裏、OAK の細かいチーム事情はわかりませんが、なぜかここで相手クローザーのヒューストン・ストリートが登板します。そしてそのストリートを見事攻略しました。まずは不調の7番城島が(このフレーズ、何度使いましたかね?)いきなりダブルで出塁すると、代走にエリスンが起用されます。8番ロペスのバントが良いところに決まりました。これがストリートの送球エラーを誘い、一気にエリスンがホームイン。ついに決勝点を奪います。その後も打線は止まらず、打者一巡の猛攻で計4点を奪い、試合を決しました。9回表はちょっともったいないですがプッツが登板し、3者凡退であっさり試合をクローズしています。
一時はどうなることかと思いましたが、結果としてムードの盛り上がる気持ちの良い勝利となりました。
イチローは5の2です。打率は.343となっています。1本目のヒットは MLB 通算1500本目となっています。あちらの実況解説を聞いているとイチローは「フューチャー・ホール・オブ・フェイマー」、つまり将来の殿堂入り選手とよく言われていますね。普通はソーサ、ピアッツァ、ボンズなどのベテラン選手がそう呼ばれるのですが、A-Rod やゲレーロと並んで、早くもその呼び声が高いようですね。あ、上記の通り盗塁も2つ決めています。
大事な OAK との試合を3勝1敗で勝ち越せました。昨年2勝しかできなかった宿敵ですし、とにかく嫌らしいチームですから、喜びもひとしおですね。順位に行きましょう。アメリカンリーグ西地区、ワイルドカードとも相変わらず2位につけています。西地区の方ですが、首位は相変わらずロサンジェルス・エインジェルズ (LAA) です。着々と勝ち続けて現在4ゲーム差をつけられています。3位の OAK とはご覧のように勝ち越しを決めましたので、ゲーム差を9に広げました。ワイルドカード争いでは首位がクリーブランド・インディアンズで、2ゲーム差をつけられています。後ろにはニューヨーク・ヤンキーズが2ゲーム差の3位でついてきています。ヤンキー、まじウザいんですけどー。
さて、天王山の3シリーズのうちの2シリーズが終わりました。最後のシリーズはついに首位 LAA との対決となります。以前、この同地区対決11連戦を負け越せばポストシーズン出場が非常に厳しくなると書きました。そして今3勝5敗ですから、マリナーたちの使命はスイープしかありません。相手先発はエスコバー、ラッキー、そしてウィーバー弟と恐ろしく強力ですが、それでも負けるわけにはいきません! バティスタ先生、ウィーバー(背中にファスナーつき)、そして“キング”フィリックスの3人の先発陣でビッグゲームをすべてものにしてほしいものです。