インターリーグも終わり、後はオールスターブレイクまで一直線というところまで来ました。そこに立ち塞がるは、アメリカンリーグ東地区で首位を独走するボストン・レッドソックス (BOS) です。最近、多少打線に元気がないようですが、それでも爆発力のある打線、いつお目覚めするかわからない恐さがあります。
第3戦には松坂の登板も予定されていて、注目の集まったシリーズです。果たしてどのような結果になったのでしょうか。
【第1戦】○ SEA 9−4 BOS
正直、まったく予想していなかったのですがウィーバーがこの日も好投を見せ、6回途中2失点(1自責点)で試合を作りました。この試合では球数が多いのが多少気になりましたが、それでも開幕当初とは切れもコントロールも別人です。確かに以前から「能力を十分発揮すれば……」という留保条件付きで好投手であるという評価は聞いていました。この“真の”実力が発揮され続ければ、思いも寄らない救世主となるでしょう。
打線もなかなかです。10安打9得点で「なかなか」は厳しい評価に聞こえるかも知れませんが、実は逆転に成功した5回の5点は相手投手タベラスのひとり相撲的な要素も強かったんですよね。したがって、打線絶好調! と手放しには喜べません。ただし、相手のミスにつけ込む野球は、去年はこれっぽっちもできていなかったので、それがチームでできている状況は喜ばしいと思います。チームの成長が少しだけ伺えます。
ただ……監督はバントに味を占めすぎです。よほどのケースでもない限り、いくらバントが上手くても3割近い打率を残しているヴィドロにバントのサインというのは生産性が低すぎます。岡島、ロペス、パペルボンをのぞいて、そんなに良いリリーフのいるチームには見えないですし。(なんで J. C. ロメロのクビを切ったんだか……)
試合はその後、リリーフに出たオフラハティ、グリーン、シェリルがぴしゃりと0点に抑える間に、城島のホームランなどでさらに加点し、勝負を決してしまいます。9回を投げたローランドスミスは2点を失いますが、すべてのアウトを三振で取るなど、将来性を見せてくれました。
イチローは4の0で、連続試合安打が途切れてしまいました。もっとも、いずれはまた打ち始まるでしょうから、次回に期待したいと思います。
【第2戦】○ SEA 8−7 BOS
乱打戦をものにしました。先発のヘルナンデスがめろめろで6回途中6失点でしたが、こちらの打線も相手先発ガバードを攻め立てます。特に初回の3者押し出しが印象的で、前日に続いて相手のミスにつけ込む野球ができています。その後、イチローの犠牲フライ、ブルームクィストの一発、セクソンの勝ち越し2ランホームランなどで6回までに8得点を奪い、試合を優位に進めます。
8−6で迎えた7回表からはセットアップのモローを投入し、逃げ切りを図ります……って、えー? 早すぎません? 9回はプッツが投げるとして、8回どうすんのー。ここは7回をデイヴィスでしょう。逆に、もしたった1イニング投げさせるのすら恐いのであれば、そんな選手はとっとと Designate for Assignment(俗に言う「事実上の解雇」)して、それこそロメロ辺りを取りに行くべきだと思います。
などと思っていたら、やっぱり早すぎました。7回、2三振を奪うなど95マイルを超える速球で打者を翻弄していたモローは、8回も続投させられ、その結果ノーアウト1・3塁のピンチを作って降板する羽目になります。その後は、今季幾度となく見てきた涙ぐましいリリーフ陣の大奮闘をまた見ることになりました。ファン視点としては楽しいんですが、あまりに多すぎると今後の戦いが心配ですし、また今季のために有望な選手たちが将来を棒に振るようなことはあってはならないとも思うので、恐くて仕方がないですね。
さて、このピンチで登場するのは MLB 最強のクラッチヒッター、ビッグ・パピことデイヴィッド・オルティーズです。特にこういう終盤の競った場面でのチャンスにめっぽう強く、こんなケースが10度あったら9度は逆転3ランを打たれそうな印象すらあります。(もちろん実際にはそんなわけないですよ。ただ、そのくらい印象が強い選手だということです。)この山場に、シチュエーショナル・レフティ(左のワンポイントリリーフ)としてジョージ・シェリルがマウンドに上がります。最高の真剣勝負、勝ったのはシェリルでした。きのうからの連投を思わせない素晴らしい切れのボールでオルティーズを三振に切って取ります。
ピンチは続きます。今日4番に入っているユーキリスは今季絶好調です。ここで早くもクローザー、J. J. プッツが登場します。プッツは2点差であることを計算に入れて、1点と1アウトをトレードします。センターへ犠牲フライを打たせます。そして2アウト1塁と、楽になった場面で続く J. D. ドリューをファーストゴロに打ち取り、事なきを得ます。
9回は圧巻でした。6番ローウェルをフルカウントから高め真ん中の直球で三振(ちょっと高すぎたと思いますが、審判が手を上げてくれました。ラッキーです。)に切って取ったかと思うと、7番バリテックも三振に打ち取ります。打席には今日が休養日だった主砲マニー・ラミレスが代打として立ちます。シーズン序盤は2割台前半しか打てない絶不調でしたが、最近はそれを吹き飛ばすように打ち続け、もう3割付近まで回復してきている、実績面でも調子面でも恐い打者を迎えました。が、プッツはそのマニーも三振に切って取ります。いつどこから一発が出てもおかしくない強力打線を前に、イニングをまたいだ後の投球で3者連続三振とは恐れ入りました。これで22セーブ、防御率はついに1.02まで下がっています。
きっとハーグローブ監督はドキドキワクワクの楽しい試合を演出するために、こんな継投をしたんですねー。わはははは〜。
イチローは3の2です。これで通算打率が.333となり、4000打数以上の現役選手で通算打率1位になっています。通算打率の記録として参照されるのが一般に5000打数以上で、これは順調にいけば来年には達成できる見込みです。ちなみにその基準で行くと通算打率1位はタイ・カッブの.367です。“球聖”カッブを超えるのはさすがに無理にしても、キャリアでどのくらい偉大な先人に迫れるのか、大変楽しみです。テレビがカラーになって以降の選手で言うなら、トニー・グウィンの.338が最高ってことになるのかな?
【第3戦】○ SEA 2−1 BOS
相手先発が松坂ということで、日本では注目の集まるカードとなりました。すんごい試合になってしまい、延長11回サヨナラ勝ちです。おそらくはイチロー対松坂、あるいは城島対松坂の対決が気になっている方も多いと思いますので、イチローについては別の記事で全打席紹介をしようと思います。ちなみに城島の方を書かないのは、この試合に欠場しているからです。デーゲームで、休養日なのです。
試合の流れだけ紹介すると、今日の松坂はほぼ完璧でした。8回を投げてわずか3安打1四球、8つの三振を奪い失点1です。3回に9番バークの2塁打のあと、イチローのセンターの前にぽとりと落ちるヒット(捕球したのはセカンドなので記録は内野安打)で1点を失ったのみです。
でも、松坂と同じくらい注目してもらいたいのが、その好投に引けを取らなかった新人フィエラベンドです。内容は決して良くなく、5回5安打2四球なんですが、それでも失点0で試合を作りました。松坂に投げ負けず、リードを奪ったままマウンドを降りたのは立派です。後続が同点に追いつかれて勝ち投手にはなれませんでしたが、それと同じくらい価値がある投球でした。特に5回、2アウト満塁のピンチでオルティーズを打ち取った投球は、本人にとってものすごい自信になったと思います。
その後グリーンが自らのエラーをきっかけに1失点するものの、それ以降はシェリル、モロー、プッツと9回まで得点を許しません。同点の場面でクローザーを出すのは、別にハーグローブ監督に限らず MLB にはよくある戦略です。が、個人的にはちょっと意図がわからないんですよね。だから10回にちょっと不安なデーヴィスが出てくることになるのですが、以前に指摘したように彼は比較的緊迫したマウンドに案外強く、2イニングを無失点で抑えます。延長11回、1−1の同点です。
BOS の方は8回まで松坂が投げられたことが功を奏し、9回にはクローザーのパペルボンではなく、余裕を持ってセットアップの岡島を投入できます。この辺が監督の差なのかなと思って見ていたのですが、その岡島が誤算で、1アウト1・3塁のピンチを作ります。ここであちらも余裕がなくなり、パペルボンを投入することになりました。パペルボンは期待に応えて、4番セクソン、5番ブルサードを打ち取り、事なきを得ます。10回も完璧に抑えて、11回裏のマウンドをジョエル・ピニェイロに譲ることとなりました。
ピニェイロは昨年までのチームメイトで、SEA 時代は先発投手だったのですが、今季 BOS に移ってクローザー候補として名が挙がっていた投手です。それがきっかけで今はリリーフとして起用されています。そのピニェイロ、1アウトからイチローに粘られて四球を許します。続く2番ロペスは直球を見事を狙っていました。ロペスは最初から「ピニェイロは直球で攻めてくる」と読んでいたようで、しかも守備がいまいちなレフト、マニー・ラミレスのところに持っていけばイチローが還れると考えていたようです。その狙い通り来た直球を捉え、矢のような打球を左中間に飛ばします。打球はフェンスを直撃します。ちょっと守備範囲の広い外野手ならファインプレイされかねないような打球でもありましたが、そこも含めて「計算済み」というわけです。劇的なサヨナラ2塁打で勝負を決しました。
イチローは4の2で、打率を.364としています。3回のタイムリーや、11回のサヨナラでホームを踏むなど、すべての得点に絡みました。しかもなぜか今日は守備でもボールがやたら飛んできて、11個ものプットアウト(要はセンターフライの捕球)を記録しています。天候の関係でボールが見えにくい日だったようですが、その中でもきらりと光る守備を何度も見せています。
勝敗の上では調子を取り戻し5連勝となりました。一時離されていたゲーム差が5まで戻り、2位浮上です。オークランドが少し調子を落として、3ゲーム差の3位となりました。ワイルドカード争いでは、クリーブランド・インディアンズに継ぐ2位で、そのゲーム差は2です。この好調が単なる調子でなく、実力であり、またシーズン中に出てきた成長であることを祈りたいものです。もしそうだとすれば、まだわずかにポストシーズン出場の望みが残っているからです。
さて、1日お休みが入ります。翌日からはそのまま地元でトロント・ブルージェイズと3連戦を戦った後、すぐにロードに出てカンザスシティ・ロイヤルズとの3連戦、オークランド・アスレティックスとの4連戦となります。そこでようやくオールスターブレイクです。