昔の英語の教科書を見たら、あまりに不自然すぎて物笑いのタネになる――これはよく言われることですよね。その辺をネタにした『永遠のジャック&ベティ』(清水義範著)なんて短編小説もあるくらいです(ちなみに『ジャック&ベティ』は昔の英語教科書のタイトルです)。『ジャック&ベティ』ではないのですが、かつてこんな例文が教科書に掲載されていたというのを聞いたことがあります。
「これは本ですか。」
「いいえ、それは犬です。」
なんでやねん。
今の教科書は、その辺の不自然さができるだけないように配慮されています。今時「私は少年です。」なんて変な(状況にもよるけど)例文はないということです。そんな昨今の教科書ですが、だからといってその興味深さはみじんも減ってはいません。一見単なる勉強の本のようですが、よくよく見れば意外と魅力的なものだったりします。
今年度(平成18年度)、中学校で教科書改訂が行われました。中1はその新しい教科書で始められるから良いのですが、中2と中3は教科書が別のシリーズに切り替わってしまいます。そうすると随所で悲劇が起こってしまうわけです。
たとえば開隆堂という会社が出している Sunshine という教科書。以前から今に至るまで、この教科書のお話の主人公は「由紀」という名の中学生の女の子でした。が、前の版の由紀のイラストの不細工なこと。たれ目、下ぶくれ、ぼさぼさ頭という酷い有様です。\∩∠なすびか! この不細工な由紀が、新しい教科書ではずいぶんかわいく生まれ変わってます\∩∠整形か!
教科書に限りませんが、書かれているお話が突拍子もなかったり、あまりに内容が重すぎたり、逆にふざけていたりなどという場合もあります。たとえば高校入試問題の長文で「突然、宇宙人が現れて『キミ達の星は美しい。大事にしたまえ』と言われて環境問題に関心を持ち始める中学生の話」という例がありました。又聞きですが、マンガ『沈黙の艦隊』のストーリー抜粋が出たという話も聞いたことがあります。
ある中3の教科書には、木の葉を主人公にした物語が載っています。春に芽生えた木の葉のフレディが、秋になって仲間達がどんどん落葉していく様を見て「嫌だ! 死にたくない」「落ちて死ぬだけの命……それに何の意味があるんだ」とつぶやきます。親友で聡明なダニエルが「仲間がいて、太陽があった。木陰で休む人や笑顔の子ども達がいた。それで十分じゃないか」と答え、そして笑って散っていきます。お、重い……。中3英語の教科書に生命の意味を深く問うような文章は少しやりすぎだと思うぞ。
意外と勉強になるような場合もあります。小学校の頃に言われていた科学の通説が実は現代では崩れていたり、疑われていたりする場合、それを学び直すのは割と難しいものです。でも、たまにそれを英語教材で学べる場合があります。たとえば恐竜の絶滅の原因は宇宙から降り注いだ放射性物質イリジウムのせいだという主張があるらしいですが、これは高3の英語リーディングの教科書に載っていました。先日、野球の記事で取り上げた偉大なカル・リプケン・ジュニアの連続試合出場の逸話を取り上げた教科書もありました。ちなみにこの教科書を某私立お嬢様学校が採択していまして、多くの生徒がピンと来なかっただろうな……とあらぬ心配をしたものです。
他にも何か面白いものを見つけたら、また記事にしますね。